「まず、法律で『原発ゼロ』を決めることだ」 〜原子力市民委員会「原発ゼロ社会への道」意見交換会 2014.2.8

記事公開日:2014.2.8取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ 関根/奥松)

 2014年2月8日、名古屋市中区の東別院会館で、「原子力市民委員会『原発ゼロ社会への道──新しい公論形成のための中間報告』意見交換会」が行われた。

 脱原発を目指す有識者と市民らで作るシンクタンク「原子力市民委員会」(座長・舩橋晴俊氏)は、「脱原子力政策大綱」の4月公表に向けて、意見交換会を各地で行っている。1月に次いで、名古屋では2回目の開催となる今回は、中間報告2章「放射性廃棄物の処理・処分」と、3章「原発ゼロ社会を実現する行程」とについて、説明と意見交換が行われた。

 「使用済み燃料は、すべて廃棄物だ。再処理した40トン以上(国内10トン、残りは英仏に貯蔵)のプルトニウムと、回収ウランもある。環境汚染、被曝、国民負担の最小化の3つの原則を立て、負担の公平性も踏まえて、処理と処分の議論をする」と伴英幸氏は述べた。

 「脱原発で合意形成をするのは、とても難しい」という意見に対しては、松原弘直氏が「原子力市民委員会内での議論が、国民全体の縮図。それを、きちんとおもてに出して、こういう議論の仕方もある、と知らしめる、公論形成の場づくりも重要だ」と応じた。

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  • 中間報告2章 「放射性廃棄物の処理・処分」
    伴英幸氏(原子力資料情報室代表、原子力市民委員会第二部会コーディネーター)
  • 中間報告3章 「原発ゼロ社会を実現する行程」
    松原弘直氏(環境エネルギー政策研究所主席研究員、原子力市民委員会第三部会コーディネーター)

脱原発のための、放射性廃棄物の処理・処分の問題

 冒頭、原子力市民委員会の大沼淳一氏が、「福島原発事故のあと、故高木仁三郎氏のご遺族の寄付により、2013年4月、原子力市民委員会が設立され、脱原発社会のシンクタンクとして活動している。現在は、有識者など50人ほどが集まり、政府に対抗する『脱原発政策大綱』を作成。今回、その内容の中間報告を行い、意見を聞く」と本集会の要旨を話した。

 原子力資料情報室代表、原子力市民委員会第二部会コーディネーターをつとめる伴英幸氏が登壇、第二部会の紹介と作成した中間報告2章の「放射性廃棄物の処理・処分」について報告した。

 「六ヶ所再処理工場や、もんじゅから撤退し、核燃サイクルが成立しない場合、使用済み燃料はすべて廃棄物になる。再処理した40トン以上(国内10トン、残りは英仏に貯蔵)のプルトニウムと、回収ウランもある。環境汚染、被曝、国民負担の最小化の3つの原則を立て、負担の公平性も踏まえて、処理と処分の議論をする」。

 そして、「青森県は、六ヶ所再処理工場が稼働しない場合、むつ市の中間貯蔵施設の3000トンの使用済み核燃料を、各原発へ返還することを示唆している。それを協議して、貯蔵してもらい、かつ、各原発が保管する使用済み燃料も、危険性の高いプール貯蔵を乾式貯蔵に移行する」と話し、分離プルトニウムのガラス固化、もしくはセラミック化など処分方法の研究と検証、そして、貯蔵に際しての自治体への税配当の必要性などを述べた。

 さらに、伴氏は「海外にある30トンのプルトニウムは、同廃棄物との等価交換や、イギリスは費用負担で処分する。使用済み燃料の廃棄物も、地上で150年保管するというが、核拡散を危惧するという理由で、プルトニウム再抽出を防ぐため、地下2~3キロの深さで地層埋設するなどの検討も必要だ」と述べた。

ソフトランディングになった脱原子力政策大綱

 伴氏の報告が終わり、続く質疑応答では、アメリカでのプルトニウム処理法、イギリスで研究中のセラミック固化について話し、「プルサーマルの使用済みMOX燃料は、高温度が長く続くため、フランスでは100年以上保管したのち、処理を考える」と述べた。

 ボアホール(竪坑処理)の実現性に対しては、「まだ研究中。将来的にアクセスできなくするためには、必要な処理法だ。日本の有識者の見解では、地層処理は、今後300年くらい無理だというので、地上保管で技術のブレイクスルーを待つ。しかし、プルトニウムを取り出す懸念は払えないので、地層処理の必要性を検討した」と、脱原発政策大綱に明記した理由を説明した。

 途中、参加者が声を荒げて壇上に駆け上がり、「地震大国の日本には、世界の10分の1の火山が集まっている。地層処理はありえない」と訴えるハプニングが起こった。

 他の参加者からは、「むしろ『地震火山大国の日本では、地層処理も不可能だ』と、原発稼働へ向かう逃げ道を閉じる議論に持っていくべき。推進派は『今まで電気を使っていたので、痛み分けだ』と主張するが、痛みを消費者に押し付けただけ。ゆえに、負担の公平性もおかしい」との意見が出た。

 伴氏も、それには同意し、大沼氏も「『脱原子力政策大綱』は、政府にも納得してもらう意図があるため、ソフトランディングな形になってしまった。反省はある」と補足した。

課題が山積する「原発ゼロ社会」への道のり

 休憩後、原子力市民委員会第三部会コーディネーターの松原弘直氏より、中間報告3章「原発ゼロ社会を実現する行程」(ロードマップ)の報告があった。

 まず、政府の策定しているエネルギー基本計画の内容について、次のように批判した。「原子力安全神話や、安い原価などへの幻想、使用済み核燃料貯蔵の問題、核燃サイクルの中止、福島原発事故の現状と復旧問題、原子力規制委員会の新規制基準の問題、国と事業者の責任の所在、原子力損害賠償制度の見直し先送りなど、課題は山積している」。

 松原氏は、エネルギー政策に関する法制度の問題点を列挙した。エネルギー基本計画に、持続可能なエネルギーシステムへの転換や、発送電分離を盛り込み、また、被災者の保護を最優先にするべき、と指摘。「国民は、10兆円の税金を東京電力に支払うこと自体、承認していないはずだ」と、事業復興計画に疑問を呈した。

 電力需給の問題に移り、「夏のピーク時でも、原発の稼働なく乗り越えられたのは、国民の節電意識が定着した結果だ。化石燃料のコスト高は、輸入燃料に対する円安による影響が半分以上を占める。かたや、原発は、稼働した時のリスクの算定を計上していない」と述べて、東電の経営問題、国や金融機関の責任の所在、立地自治体の原発廃止による経済問題などについて説明した。

再稼働を安易にさせる原子力損害賠償法

 国民的合意形成プロセスの重要性については、原発ゼロ社会へ向けた、国レベルでの合意システムの形成が不可欠だとし、同様に、政界、学会、経済界、教育現場などでの対話の必要性を挙げて、原発ゼロ社会を実現する行程を表示した。

 「原発ゼロを実現するための基本的アウトラインでは、法律で『原発ゼロ』を決めること。まず、原子力発電を禁止し、エネルギーシフトを明言する。かつ、その方針を作る組織も独立させる。原子力損害賠償法の見直し。現在、これがいい加減なので、安直に再稼働に進んでしまう」。

 そして、「持続可能な社会を実現するためのエネルギーシステムの転換」について、「原発ゼロ、気候変動の抑制、エネルギー安全保障などを考慮しながら実施する」とした。

 また、「電力需給・経済影響などの緩和措置」として、廃炉プロセスと東電、日本原電、日本原燃などの経営問題に言及。合意プロセスの形成に関する課題、原発輸出と国際的責任についても話した。

 最後に松原氏は、国会エネルギー調査会、脱原発NGOの活動状況、エネルギー白書2014の紹介を補足して、意見交換に移った。

とても難しい、脱原発への合意形成

 廃炉処理会社については、「国の責任がはっきりしていないうちに、分離して廃炉処理会社をつくることは疑問。あくまでも、東電の破綻処理を率先するべき」というのが同委員会の立場だという。

 また、「現在、事故原因を究明する法的根拠がなくなってしまった。刑事責任を追求する訴訟も却下された。無瑕疵責任で進める方法もある。原発事故は、現状の損害賠償制度では収まりきらない」など、数々の意見が寄せられ、松原氏はそれぞれに答えていった。

 「先ほどのように、強く反対する人たちもいる。脱原発で合意形成をするのは、とても難しい」という感想に対して、松原氏は「原子力市民委員会内での議論が、国民全体の縮図でもある。それを、きちんとおもてに出して、こういう議論の仕方もある、と知らしめる公論形成も重要だ」とまとめた。

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