【東京都知事選】宇都宮健児氏「今、若者は希望が持てない。世界一働きやすい東京をつくる」 ~公開意見交換会 2014.1.19

記事公開日:2014.1.19取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「メディアは政策論争を避け、『一本化するか、しないか』ばかり。争点が隠されている。堂々と出てこないで、政策論争もできない人が、都政をまとめることができるのか。とても疑問だ」──。

 2014年1月19日14時から、東京都千代田区にあるYMCAアジア青少年センター国際ホールにて、「宇都宮けんじ都知事選候補との公開意見交換会」が開かれた。主催者のブラック企業対策プロジェクトは、都知事選に向け、ブラック企業対策に関する政策要求を作成。それをもとに、この日、都知事選候補者の政策討論会を企画したが、宇都宮健児氏だけが参加した。主催者は「他の候補者には質問状を送付し、後日、政策論を答えてもらう」とした。

■ハイライト

  • 内容
    ブラック企業被害当事者からの報告/プロジェクトメンバーからの政策提言案の報告/都知事選候補者との意見交換会

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証拠がないと相手にしない労政事務所

 冒頭、NPO法人POSSE事務局の佐藤学氏より、本会の概要説明があり、まず、ブラック企業被害当事者2名の報告が始まった。宇都宮氏はメモを取りながら、2人の話に聞き入った。

 1人目は34歳の男性。6年ほどデザイン関係の会社に勤務した体験を話した。超過労働、皆無だった休日。そして、上司のパワハラ。「一昨年、胃がんが見つかり入院。完治して職場に復帰したところ、その日から、体調もままならないのに超過勤務をさせられた。その後、社長から会社都合での退職勧告を受け、承諾。しかし、離職票は、自己都合退職にすり替わっていた。後日、確かめると書類を偽造していた」と語った。

 2人目は、繊維関係の中小企業に勤めていた男性。退職理由は、労働時間の長さと、社長の暴力などのパワハラだった。過度なパワハラが原因の場合、会社都合の退職にできることを知り、労政事務所(労働相談情報センター)に相談するが、「証拠がない」と相手にされなかったという。「相談窓口が少なく、便宜性も低い労政事務所自体にも問題がある」と指摘した。

都知事選に向けた3つの政策要求案

 次に、NPO法人POSSEの今野晴貴氏が、ブラック企業対策プロジェクトの、都知事選に向けた3つの政策要求案を説明した。

 「1つ目は、都内の労働相談窓口の拡充。東京都は、年4000件も相談のある、八王子市や国分寺市の労政事務所を廃止する予定だ。労働相談に従事する人員の削減も掲げている」と、その是正を訴えた。

 2つ目は、東京都の中学・高校でのワークルール教育の実施。「若者がブラック企業に入ってしまった場合の、対処法などを教育してほしい」とした。3つ目に、都の取引先企業に対し、若者の「使い捨て」を行わないように要求すること、を挙げた。

教育現場で、労働者の権利を教えるべき

 被害当時者2人の体験談を聞いた宇都宮氏は、「相談窓口の不足や、その認知度の低さは問題だ。労政事務所では、年間5万件を対応していると聞くが、石原都政では、労政事務所2ヵ所を閉鎖。さらに、2ヵ所削減はおかしい」と述べた。

 かつて、消費者金融の被害者救済に尽力した宇都宮氏は、「貸金業法改正では、まず多重債務者をあぶり出すことから始めた」と経緯を語り、「労政問題も、行政と弁護士会、NPOなどを巻き込んで展開していく必要がある。また、学校教育も重要だ。多重債務問題は、すでに教育現場から始めているが、労働問題は遅れている」と語った。

 「労働組合の作り方、団体交渉のやり方、生活保護の申請方法、窓口で断られた場合の対処法、緊急時の駆け込み寺など、実務をもっと教えるべき。たとえば、ロサンゼルスで会った労働法の教授は、大学で労働運動の活動家を育てている。その教授は『経営者と同じくらい、労働者も税金を払っている。だから、労働者の身を守る権利を教えるのは当然だ』という」。

公契約条例、過労死防止条例の制定で、働きやすい東京へ

 さらに宇都宮氏は、「抽象的な知識ではなく、具体的な技術として、デモのやり方、ビラのまき方、集会のやり方など、これらも民主主義社会の当然の権利として教えるべきだ」と主張した。

 また、「東京都には、特別会計を合わせると12兆円という、スウェーデンの国家予算と同じくらいの予算がある。これまで、東京都の公共事業は、入札で1円でも安い会社に発注されてきたが、そのしわ寄せは人件費にくる」として、「公共事業を受注する企業の労働条件(最低賃金や男女平等など)をチェックする、公契約条例の採用や、過労死防止条例の制定も考えている」と述べた。

 宇都宮氏は「世界一働きやすく、くらしやすい希望のまち東京をつくる」という知事選での公約に触れて、「現在、若者は将来への希望を持てない。それを変えていく東京都政づくりを行う」と語った。

石原都政は、新宿と渋谷の労政事務所を閉鎖

 意見交換会に移り、主催者共同代表の柳沼吉孝氏(産業カウンセラー)は、「石原都政は、立地の良い新宿と渋谷の労政事務所を閉鎖した。国も労働基準局内で、労働相談を始めてはいるが、労政事務所のほうが、断然、ノウハウも情報量も充実している。東京都が、今後、さらに労政事務所を削減すると、他の自治体も同調してしまう」と危惧した。

 宇都宮氏は「やはり、卒業式や成人式などで、労働問題を若者に少しでも教えるべき。労政事務所のPR活動はもっと必要だ。相談窓口の情報だけでもためになる」と話した。

 先ほど体験談を語った当事者は、「労働時間や条件など、基準がわからないので、相談窓口にどう相談していいかもわからなかった」と述べ、宇都宮氏は「そのために、労働基準法、労働組合法などがある。それらは、やはり学校で教えるべき。合わせて、社会に出てからも、情報がもっと楽に得られるようにならなければいけない」と答えた。

『一本化するか、しないか』ばかり。政策論争を避けるメディア

 今野氏は「都知事選で、労働問題をどう争点にしていったらいいのか。ブラック企業は、これから日本経済を背負って立つ大学新卒者のような、若い貴重な人材まで蝕みはじめている。ブラック企業問題は、日本社会全体に大きな影響を与える」と力説した。

 宇都宮氏は「今回の選挙は異常だ。1月14日、青年会議所が立候補予定者の公開討論会を企画したが、自分以外、みんな辞退した。政策が決まらない候補者までいる。都政には、震災対策、福祉、医療、教育、雇用など、問題が山積だ」と述べた。

 さらに、「メディアは政策論争を避け、『一本化するか、しないか』ばかり。争点が隠されている。堂々と出てこないで、政策論争もできない人が、知事になって都政をまとめることができるのか。とても疑問だ」と憤りをあらわにした。

東京を、悪政からの防波堤にする

 質疑応答に移り、参加者から「安倍政権は、東京を『ブラック雇用特区』にしようとしている。都知事選では、ぜひ、労働問題を大きく表出させてほしい」という意見が寄せられた。

 宇都宮氏は「安倍内閣の国家戦略特区構想のひとつ、雇用特区は影を潜めたが、安倍首相は、企業が儲けやすい国づくりを目指している。また、安倍首相が顧問のカジノ議連が、東京都にカジノ特区も作ろうとしているが、とんでもないことだ」と応じた。

 その上で、「経済面で、GDPが上がり、労働者の賃金が下がっている国は日本だけ。安倍政権の考え方は、企業にはいいが、労働条件の改善にはつながらない。国の悪政が及ばないように、東京都が防波堤の役目をしなくてはならない」と話した。

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