岩上安身によるインタビュー 第89回 ゲスト 元外交官 孫崎享氏 2011.2.1

記事公開日:2011.2.1取材地: テキスト動画独自
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 2011年2月1日、岩上安身が、元防衛大学校教授で元外交官の孫崎享(まごさき・うける)氏に緊急インタビューを行った。インタビューのテーマは、チュニジアの*ジャスミン革命やエジプトの民衆革命、また激しく流動する中東情勢、そして政治とメディアについてだった。

*ジャスミン革命とは、2010年から2011年にかけてチュニジアで起こった民主化運動。

■ハイライト

 近年、欧州と北アフリカは経済が一体化しつつある。そうした中、チュニジアでジャスミン革命が起こり、その火がエジプトへ飛び火した。エジプトでは、チュニジアとは比べものにならないほどの大きな影響があった。エジプトは、*ムバラク政権下で長い間、親米・親イスラエルを貫いてきた。イスラエルにとって、エジプトはまさに生命線だ。今後、エジプトがどのような展開を見せるかによって、中東の情勢は一気に変化する。アメリカにとって望ましいシナリオは何か、そしてエジプトの人々は何を求めているのかについて、孫崎氏に聞いた。

*ムハンマド・ホスニー・ムバラクは、エジプトの第4代大統領で、1981年から約30年にわたる長期政権を維持したが、2011年の革命によって失脚した。

 ノーベル平和賞も受賞した*エルバラダイ氏は、エジプトに帰国した。しかし、エルバラダイ氏は、IAEA事務局長であった時代、イラクは大量破壊兵器を持っていないと主張し、イラク戦争を始めたいアメリカに抵抗した。孫崎氏は、イスラエルは、そうしたエルバラダイ氏を承認できず、そして、イスラエルが認めない人物を、アメリカが認めることは難しいと説明する。

*モハメド・エルバラダイは、国際原子力機関(IAEA)の第4代事務局長で、2005年、IAEAとともにノーベル平和賞を受賞した。エジプト・カイロ出身。

 一方、デモに参加しているエジプトの人々は、ムバラク大統領が後継に指名した*スレイマン元情報省長官のことを認めていない。そして他方には、非合法のイスラム原理主義のムスリム同胞団がいる。孫崎氏は、三者それぞれの思惑とアメリカ・イスラエルの利害がからむ中、どのようなシナリオが可能なのか、そして、「エジプトの9月の大統領選挙まで余談を許さない状況が続く」と語った。

*オマル・スレイマンは、エジプトの政治家で、副大統領や諜報機関である総合情報庁長官などの要職を歴任した。ホスニー・ムバラクの側近の一人で、米国からの信頼も厚かったとされるが、2012年7月に死去。

 チュニジアとエジプトで起こった革命を可能にしたものは何なのだろうか。市民は、国営放送の情報は信用できないと知っている。だから本当の情報を求め、インターネットのFacebookやTwitterを活用する。ところが、日本においては、未だ、マスメディアを信用している市民が多い。マスメディアは、生活に密着した部分では信用できても、政治の部分は操作され誘導されている。

 菅直人政権になってから突如登場したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題、これは農業の問題であるとマスメディアは喧伝するが、分野は農業だけでなく多岐にわたっている。例えば、電気通信分野では、電波オークションが導入され、既存マスメディアはアメリカの企業に叩き売られる可能性すらある。

 アメリカの中国に対する態度は、オバマ大統領の首席補佐官の交代により変化した。アメリカが中国にすり寄っている中、経済だけでなく軍事的にも日中のバランスが崩れている。しかし、日本の政治やマスメディアは、国際的なコンテクストの中で、国家戦略を考えることができない。これらを変えていける可能性があるのは、やはりインターネットである。

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