政府は本気で待機児童問題に取り組む気があるのか~保育中の事故で子供を亡くした母親が訴え「保育士を大切にしないと子どもの命は守れない」~私たち声をあげます!大作戦 2016.4.11

記事公開日:2016.4.11取材地: テキスト動画
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(取材:山本愛穂、文:IWJテキストスタッフ・関根かんじ、記事構成・岩上安身)

※5月26日テキストを追加しました!

 安倍総理は2015年9月30日、アベノミクスの「新3本の矢」を発表した。その中の第2の矢が「夢を紡ぐ子育て支援」で、2017年までに、待機児童ゼロ、希望出生率1.8%を掲げていた。にもかかわらず、子育てを巡る環境は一向に改善されず、2016年2月、「保育園落ちた日本死ね!!!」ブログに端を発した待機児童問題は、母親たちが国会に抗議に行くほど大きなうねりになった。

 それを受けて、厚生労働省は3月28日、「待機児童解消に向けて緊急的に対処する施策について」を発表。しかし、そこでは肝心の保育士の給与拡充には一切触れておらず、逆に、定員数を増やすという規制緩和対策が盛り込まれた。緩和が進めば、保育の質の低下は避けられず、保育中の事故の可能性も高まる。低賃金で激務の保育士の仕事はさらに激務となり、資格をもっていても保育士の仕事につかない人がさらに増える。人材確保がますます困難になり、待機児童問題の解消はさらに遠のく。

 当然のことながら、親たちの間には「定員だけ増やしても、保育士の待遇が改善されないのなら、逆に保育の質が低下してしまう」との不安の声が高まった。

 5月18日に政府が決定した、今後10年の施策をまとめた「ニッポン一億総活躍プラン」。この中では「(全産業の女性労働者の平均賃金との差が)月額4万円程度であることを踏まえ、賃金差がなくなるよう処遇改善を行っていく」という記述が盛り込まれた。これに対して、保育士の給与の平均は、全産業の平均月給よりも月額11万円も低いのだが、その格差を小さく見せるため、わざわざ女性の平均賃金と比較するという卑劣なごまかしが用いられたと、批判の声が上がったが、政府はそうした批判を一蹴した。

 しかも、実際の実施は2017年度に先送りされた。さらに、野党が必要な財源や具体的な引き上げ額を聞いても「お答えすることは困難である」と答弁する始末。本当に実行する気があるのか、今から疑いの声があがっている。参院選前のアピール、空手形にすぎないのではないのかとの批判の声もある。

▲厚労省が募集した「保育制度全般の改善についての意見」を手渡す母親たち

▲厚労省が募集した「保育制度全般の改善についての意見」を手渡す母親たち

 2016年4月11日、東京都千代田区の衆議院第二議員会館で、「保育園!!!詰め込みやめて!給料上げて!保育園つくって!私たち声をあげます!大作戦 ~保護者&保育士~」と題した集会が開催された。幼子を抱きながら参加した母親たちが、厚生労働省や内閣府の担当者に、「待機児童問題の対策には(入園者の)数ではなく、保育の質の確保が重要だ」と訴えた。

 大田区在住の母親は、保活(子どもを保育園に入れるために保護者が行う活動)を経験した母親に、インターネットでアンケートを実施したという。「47.4%の母親が、妊娠中もしくは出産後3ヵ月未満で保育園探しを開始している。妊娠中でも保育園見学などに動き回り、その厳しさから、2人目の出産は諦めざるを得ない、という声も上がっている」と訴えた。

 安倍政権のすすめる規制緩和は、たくさんの子どもを一人の保育士がみる羽目になり、保育の質の低下だけでなく、安全性の低下、事故の可能性も格段に高まる。実際、規制緩和は何年も前から進んでおり、子どもの死亡事故が規制緩和前より格段に増えている。

 保育事故で生後4ヵ月の子どもを失った女性は、「子どもを亡くすことは、本当に地獄だ。厚労省の人たちでも、議員でも、子どもを亡くすことの悲しさは同じはず。保育士の待遇改善は、子どもたちの命に直結する」と悲痛な面持ちで語った。

 自身も保育園に子どもを預けている民進党の山尾志桜里衆議院議員は、「この問題が国民へ広がったのはよかったが、対策は(保育の)質を下げて量(人数)を拡大することではない。厚労省は、ポイント制の入園審査などで母親たちを競わせないでほしい」と語気を強め、対策として「自治体別に待機児童の正しい数を公表すること。保育士の給与を上げること。働く母親が、わが子と接する時間が持てる労働環境の改善」の3点を挙げた。

 厚労省からは、当初予定した保育課長は欠席。代理に出席した担当官は、「それぞれの家庭事情を踏まえ、検討を要すると改めて思った」と応じた。内閣府担当官は、「待機児童解消のため、3000億円の財源を確保するようにしたい」と述べるに留まった。

記事目次

■ハイライト

  • 出席者 保護者、保育士(正規、非正規、潜在)、厚生労働省児童家庭局保育課担当官、内閣府子ども・子育て本部参事官付き企画官、山井和則衆議院議員(民進党)、柿沢未途衆議院議員(民進党)、山尾志桜里衆議院議員(民進党)、田村智子参議院議員(共産党)、吉良よし子参議院議員(共産党)、梅村早江子衆議院議員宮本徹衆議院議員(共産党)、島津幸広衆議院議員(共産党)、もとむら伸子衆議院議員(共産党)、堀内照文衆議院議員(共産党)、斉藤和子衆議院議員(共産党)、池内さおり衆議院議員(共産党)
  • 日時 2016年4月11日(月) 13:30~
  • 場所 衆議院第二議員会館(東京都千代田区)
  • 主催 ママ・パパ・保育士(潜在も)国会へ!有志

保活は妊娠中から始めなければ保育園に入れられない。2人目の出産を諦めてしまう母親も

 集会では母親たちが次々にマイクを回して、待機児童問題への政府の対応について意見を表明した。

 「保育園に落ちたため、私は高校教師を辞めざるをえなかった。母親には子どもを安全に預ける権利があるはず」。

 「なぜ、先行投資でもある幼児教育を担う保育士の待遇が低いのか」。

 「仕事と育児の両立ができない。保育園に入れられない専業主婦に対しても施策が必要だ」。

 「保育士として働いていたら時間もなく、賃金も低く、自分の子どもは産めない」。

 「保育園不足が子どもに格差を生じさせている」。

 「保育園の民営化も、保育士の賃金減額の要因だ」。

 認可保育園の増設を訴える運動をしているという主婦は、「2013年4月、首都圏の9つのママたちのグループが、保育園の質を下げないでほしい、と厚労省に要望を出した。政府はいつになったら、親と保育士の願いをかなえる対策を講じるのか」と述べ、この問題は急に起こったことではないと指摘した。

 大田区在住の母親は、保活を経験した母親たち700人にインターネットでアンケートを実施した。母親たちは保育サービスの重要なポイントとして、通園距離、保育時間、保育期間を挙げている。

 「47.4%の母親が、妊娠中もしくは出産後3ヵ月未満で保育園探しを開始している。みなさん、6~10件の認可保育園や認証保育園へ電話問い合わせや見学を行い、同時に併願をする」と驚きの実態を明かし、妊娠中でも保活に動き回らなくてはならず、精神的および体力的な負担から、2人目の出産は諦めざるを得ないという声も上がっていると話した。

保育士の待遇改善は子どもたちの命に直結。数の問題ではなく、質の確保を優先してほしい

▲保育中の事故で生後4ヶ月の子どもを亡くした母親は、保育の質の重要性を訴えた

▲保育中の事故で生後4ヶ月の子どもを亡くした母親は、保育の質の重要性を訴えた

 そして、保育中の事故で子どもを亡くした女性がマイクを握った。

 2010年5月に男児を出産したが、保育園に入れず、保育ママに預けていたが、同年9月、保育中に生後4ヵ月で死亡。司法解剖の結果、吐いたミルクを詰まらせた窒息死と判明したが、保育者の対応に納得がいかず、裁判で係争中だという。

 「子どもを失くすことは、本当に地獄。言葉にはできない。朝、いってらっしゃいと送り出して、次には真っ白な死に顔に直面することになった親の気持ちを想像してほしい」

(…会員ページにつづく)

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「政府は本気で待機児童問題に取り組む気があるのか~保育中の事故で子供を亡くした母親が訴え「保育士を大切にしないと子どもの命は守れない」~私たち声をあげます!大作戦」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    2016/04/11 保育園!!!詰め込みやめて!給料上げて!保育園つくって!私たち声をあげます!大作戦~保護者&保育士~(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/296124 … @iwakamiyasumi
    この保育園問題が日本を変えるキッカケになるかもしれない。もう黙らない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/719807514338983937

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