■■■■■■■■■■■■■■ IWJ週報[2013.01.25]■■■■■■■■■■■■■■ [もくじ] ◆ニュースピックアップー今週の中継からー◆ ◆特集〜アルジェリア日本人人質事件から考える◆ ■孤立する日本 ーーアルジェリア日本人人質事件から見えてくる、安倍政権「右傾化」の真実 ■岩上安身特別寄稿 実名報道とメディアスクラムについて ◆IWJ記者の現場レポート◆ ■「決められない政治」から「決めることを回避する政治」へ ーー自民党「TPP参加の即時撤回を求める会」が会合開く ■自民党憲法改正草案が突きつける制約と規制、そして基本的人権の軽視 ーー梓澤和幸弁護士・澤藤統一郎弁護士インタビュー ◆IWJライブラリー◆ ■2011年12月30日 孫崎享インタビュー ◆IWJカルチャー◆ ■押井守監督が外国特派員協会で記者会見 ーー電子出版におけるマンガ表現の新たな可能性 ◆編集後記◆ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ============================= ◆特集〜アルジェリア日本人人質事件から考える◆ ============================= ■孤立する日本 ーーアルジェリア日本人人質事件から見えてくる、安倍政権「右傾化」の真実  1月16日、アルジェリア南東部イナメナスで起きた武装勢力による人質事件は、25日現在で日本人10人の死亡が確認され、最悪の事態を迎えた。他国を含め、全体の人質の死者は少なくとも38人に及ぶ。  この痛ましい事件については、「国際テロ組織アルカイダ系組織」が、フランス軍によるマリへの軍事侵攻に対する報復として引き起こした、との報道が大々的に流れている。しかし、このフランスの軍事侵攻やアルジェリア人質事件の、詳しい経緯はほとんど報じられていない。  23日に岩上安身がインタビューした、イスラムと西欧世界の関係に詳しい内藤正典氏(同志社大学教授)は、「『アル・カイダ』『テロとの戦い』という呪文のような言葉で思考停止状態に陥ってしまい、フランスのマリ侵攻が正当化された」と、欧米社会と日本のマスコミ報道を批判する。内藤氏は、「本来イスラム過激派は日本人をまず狙わない。それは日本が軍を派遣しないからだ」と語り、マリ侵攻のような旧宗主国による旧植民地への横暴な振る舞いを、「恐ろしく時代錯誤な考え。他国に攻め込んだところで、恨みが再生産され、経済活動も停滞するだけ」と断じた。(【内藤正典教授のインタビュー記事はこちら】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/54822)  この時代錯誤な旧宗主国と同じ道を、日本も歩もうとしている。自民党の石破幹事長をはじめ、菅官房長官、公明党の井上幹事長が、アルジェリア人質事件に関連して早々に、「自衛隊法改正」に言及した。海外で紛争などが起きて、日本人が危険な地域に取り残された場合、自衛隊を派遣して救出や輸送ができるよう、自衛隊法を改正すべき、という考え方である。  安倍政権は、その誕生前から、憲法改正と集団的自衛権の行使容認をかかげながら、自衛隊の海外派遣を可能にしようとしている。そして、総理就任早々、昨年12月27日付で「アジアの民主主義セキュリティダイアモンド」という英語論文を、国際言論団「プロジェクトシンジケート」に寄稿した。この論文で安倍総理は、「南シナ海は『北京の湖』となっていくかのように見える」と、中国の脅威を挑発的に煽り、「オーストラリア、インド、日本、米国ハワイによって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するダイアモンドを形成」して、対中包囲網を構築すべきだと、攻撃的な口調で訴えている。  こうした安倍政権のタカ派的な動きに対し、米国内からも懸念の声があがっている。ロサンゼルス・タイムズ紙は1月11日付の記事で、「軍事国家日本?」と題し、自民党の新憲法案をはっきり何条が問題かをきちんと指定しながら、「自民党は全体主義的、軍事主義的な日本を作ろうとしているのだ」と批判している。そして、「一つだけはっきりしていることがある。世界中の人権団体は、自民党の憲法改正に反対する世論を形成するために動くべきである」とまで書いている。  米国のネオコンに従属して「右傾化」する安倍政権の動きを、米国のリベラル派は明らかに警戒している。基本的人権や言論の自由の制約など、自ら民主主義を放棄するような改憲案を出していることに関し、あの米国から懸念の声が上がっている。この事実を、今後一層注視していかなければならない。対中包囲網をめぐり、安倍総理の期待とは裏腹に、日本が孤立化する可能性もある。(岩上安身) (【米国ネオコンの言いなりで進む安倍政権の「右傾化」と、その動きに米国内からも懸念の声があがっていることに関しては、メルマガ「岩上安身のIWJ特報!」の第72号「メディアが報じない『安倍セキュリティダイヤモンド構想』の危険性」で詳しく論じているので、そちらをご参照されたい。また、自民党新憲法案の危険性についても、本メルマガ第63号、第73号、第74号で掲載している】→ http://bit.ly/p5A3bt) ■岩上安身特別寄稿 実名報道とメディアスクラムについて テレビ朝日「報道ステーション」が1月23日の放送で、アルジェリア人質事件で亡くなった方の実名を報道した。この放送に対し、twitter上では、テレビ朝日の姿勢を批判する書き込みが相次いだ。 アルジェリアでの人質事件で9人の日本人が亡くなられた。痛ましい限りである。この事件で犠牲になった方々に心より哀悼の意を表したいと思います。 その後、この事件の報道をめぐって、マスコミ各社が御遺族が望んでいないのに被害者の方々の実名を明らかにするという「事件」が起きた。遺族感情を無視し、「報道の自由」の名の下に、踏みにじる、マスコミ各社の暴挙であり、メディア・スクラムによって人権が侵害された、れっきとした「事件」であると思う。報道にかかわる一人として、残念でならない。 今から約三十年前、駆け出しの週刊誌記者の頃、ある有名人の葬式の取材に行かされた。報道陣はここまで、という仕切りがあり、そのすぐ向こう側では読経が行われていた。その距離を詰めることは、葬儀の厳粛さを損なうであろうと十二分に予想された。 だが、報道陣の何人かは不服をあらわにし、「もっと前へ行かせろ」と遺族側の喪服を着た方々に詰め寄った。もみあいになり、葬儀場が騒然となった。先頭に立っていた1人のカメラマンが振り返り、報道陣みんなに向かって「おい! みんな! 突入しようぜ!」と大声をあげた。 あの時の現場の異常な空気を、今も忘れない。人の死を悼む厳粛な葬儀の場を踏みにじり、荒らす権利があると思い込んでいる、そういう「群れ」の中に自分も身を置いていることがたまらなく不快だった。本当に制止をきかず、彼らが突破しようとしたらどうしようか、と考えた。 結局、「突入」は制止されたが、後味の悪い空気はその現場にずっと残った。初めてそんな現場に出くわした全くの新人の僕は、「やめろよ」と咄嗟に制することができなかった自分を恥じつつ、制していたらどんな展開になったか、思い巡らしても想像がつかず、ずっと混乱していた。 突進するものを制したとしたら、他社の人間に取材を妨害されたとして、大きな問題になっていただろう。自社の上司も前進しなかったことを「臆病」と責めるに違いない。あの時の自分の混乱を思い出すと、メディアスクラムが起こる心理的な仕組みが痛いほどよくわかる。 新聞でもテレビでも雑誌でも、マスコミに入ったら一度は事件記者を経験する。そして事件記者の第一歩は、事件の被害者の「ヤサ割り」(自宅を突き止めること)と「ガンシャ」(顔写真)の入手である。取れなければデスクに怒鳴られる。本当にヤクザな仕事である。 ご遺族が納得してくれて、納得してくださった上で、遺影や遺品を写させてもらったり、話を聞かせてもらったり、というならば理解できる。しかし、合意もないのに、なぜ強引に事件被害者の顔写真や実名を出すのか、駆け出しの当時も、今も、納得がいかない。(岩上安身) ====================== ◆IWJ記者の現場レポート ====================== ■「決められない政治」から「決めることを回避する政治」へ ーー自民党TPP即時撤回を求める会 自民党政権が誕生したことで、日本のTPP交渉は進むのかどうか。1月23日(水)、自民党本部で、「TPP参加の即時撤回を求める会」会合が開かれた。この日の会合には40人を超える自民党所属の議員が参加。事務局によると、メンバーは同日時点で昨年末から22人増え、203人となった。配布された同会の会員名簿には、小野寺五典防衛相、茂木敏充経産相といった、安倍内閣の閣僚も含まれていた。 この日、講師として招かれたのは、ノンフィクション作家の関岡英之氏。この日の講演で関岡氏は、TPPを構造障壁イニシアチブ(SII)の延長に位置すると紹介。TPP交渉で議論の対象になっている混合診療の全面解禁について、「アメリカの民間保険会社が新しく市場を開拓するための規制緩和だ。日本の社会保障が崩壊する」と警鐘を鳴らした。出席した自民党の議員からは「大変勉強になった」という声が上がった。 しかしこれは、すでに民主党が長い時間をかけて議論してきたことだ。山田正彦前議員が会長を務める「TPPを慎重に考える会」は40回を超える勉強会を開催。農業、郵政、保険、医療、著作権、公共調達など、TPPがカバーする24分野に関して、各省庁の担当者を呼び、資料を提出させて議論を行った。時には、「ごまかすな!」「ウソをつくな!」「国を売る気か!」など、秘密裏に交渉を進めようとする役人に対し、慎重派の議員が激しく詰め寄る場面もあった。 この「慎重会」に輪をかけて激しいやり取りがされたのが、マスコミを完全シャットアウトして行われた、経済連携PTである。APECでの野田総理のTPP交渉参加表明が取り沙汰されていた2011年11月、この経済連携PTは異様な緊張感に包まれていた。例えば、慎重派の篠原孝議員が、SIIの結果を受けた大店法の改正により、地方の商店がいかに疲弊したかを具体的な数値を用いてプレゼンする。それに対し、推進派の近藤洋介議員が「それはデータを都合よく解釈しただけだ」と反論する。では、実際はどうなのか。PTが経済産業省に資料の提出を要請する。しかし経産省は数字をぼかした資料を出す。結果、再び大激論へ。TPPがSIIの延長であることなど、経済連携PTに出席していた議員にとっては議論の前提だった。少なくともこれが、先の衆院選で惨敗した民主党の水準だったのである。 「TPP参加の即時撤回を求める会」会合終了後、同会の森山裕会長は記者団に対し、「我々は民主党と違い、政府与党一体だ」と語った。確かに自民党と民主党は違う。しかしそれは、TPP交渉に参加するかという政策レベルの話ではなく、議論の質においてであるように見える。民主党は政策の議論に長い時間を割いた結果、「決められない政治」だと批判された。そして、意見の対立は党の分裂を招いた。では、だからと言って、政策議論を深めないまま、「決めること」を優先した政治を行なって良いのであろうか。自民党はおそらく、地元の声、業界団体の声、そして省庁の意向に配慮しつつ、政策議論を深めないまま「なんとなく」決めてしまうだろう。同会の名簿に、現役閣僚が名を連ねていることが、そのことの証である。民主党の敗北が私たちに示したのは、熟議型政治の限界ではなく、その方法の再検討であったはずだ。熟議を放棄する政治は、単なる後退でしかない。(IWJ平山茂樹) 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/54690 ■自民党憲法改正草案が突きつける制約と規制、そして基本的人権の軽視 ーー梓澤和幸弁護士・澤藤統一郎弁護士インタビュー  1月18日、就任後初の外遊先として東南アジアを訪問していた安倍晋三首相は、インドネシアのユドヨノ大統領との会談の中で、首相任期中の憲法改正を目指す意向を示し、改めて安倍政権が憲法改正に向けて前のめりであることを窺わせた。自民党憲法改正草案の中身について、IWJは、昨年の12月、2度にわたって、澤藤統一郎弁護士と梓澤和幸弁護士にインタビューをし、さまざまな問題点を明らかにしてきた。そして1月25日(金)に、第3回目となるインタビューを行い、さらに多くの危険性が浮かび上がった。  日本国憲法の第20条(信教の自由)は、国民一人ひとりがどんな宗教を持っても、持たなくても自由であることを定めるとともに、国がいかなる宗教的活動もしてはならないという「政教分離」の原則も定めている。戦後、日本は徹底して政教分離の道を歩んできた。なぜなら、日本を戦争へと導いた「国家神道」のような国家による宗教を絶対に許さない、という戒めがあるからである。  しかし、自民党案では、現行憲法にある『いかなる宗教的活動もしてはならない』から、『特定の宗教のための(活動)』へと変えられ、さらに、社会的儀礼や習俗的行為の範囲内であれば問題ないという旨の一文が加えられている。澤藤弁護士は、『社会的儀礼』という文言を取り上げ、「これは、基本的人権を制約する理屈に使われる言葉であり、絶対にあってはならない」と厳しく批判した。  そして、日本国憲法第21条(表現の自由)は、集会や結社、また言論、出版ほか一切の表現の自由を定めている。ところが、自民党案では、ここに第2項が新設され、『公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない』という驚くべき内容が付け加えられている。これは「日本は、民主主義国家ではない」という宣言にほかならない。  梓澤弁護士は、かつて宗教や民主運動、思想・研究の弾圧にまでつながった「治安維持法」と非常に似ていると指摘する。もし、この憲法案が通れば、日本のジャーナリズムは今以上に壊滅する。政府権力側は、自分たちにとって邪魔な人間を、『公の秩序を害する』という理由で、犯罪者に仕立て上げることができる。真っ先に、IWJのようなメディアが狙われることになるだろう。  自民党の憲法改正案をめぐる報道は、「国防軍」などを定めた第9条が中心であり、未だに大手メディアでも、その全体像を分析した報道はない。しかし、自民党案の中身1つ1つを細かく見ていくと、多くの危険が散りばめられていることがわかる。IWJでは、今後も逐条解説を行い、この問題を発信し続けていく。(IWJ大西雅明) 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/55018 ============================ ◆ニュースピックアップ〜今週の中継から◆ ============================ 今週IWJが中継したものの中から、気になるニュースをピックアップ! ■忘れられた戦争の教訓 単一の価値観を植え付ける教育 ーー1月19日(土) 高校教科書があぶない!東京都教育委員会の教科書採択妨害を許さない大集会   高校1年の日本史教科書の採択をめぐり、都教委が教育現場に圧力をかけたとされる問題で、「高校教科書があぶない!東京都教育委員会の教科書採択妨害を許さない大集会」がなかのゼロ小ホールで開催された。月刊「世界」元編集長・岡本厚氏は講演で「こうした押し付け教育が太平洋戦争を引き起こしたという反省点を、ひっくりかえそうとしている」と警鐘を鳴らした。 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/member/archives/9385 ■未来の党、阿部氏が代表就任 ーー1月20日(日)日本未来の党記念講演会 日本未来の党が20日、衆院選後初めてとなる総会と記念講演会を開いた。出席したのは同党の嘉田由紀子元代表、飯田哲也氏と阿部知子衆議院議員。「生みの親から育ての親へバトンタッチ」として、代表が嘉田氏から阿部氏に引き継ぎがれた。未来の党政策アドバイザー・飯田哲也氏は、「エネルギー戦略に関しては、未来ではなく過去を選んだ」とし、改めて、未来に向けた「卒原発」構想を語った。 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/54238 ■対中偏向報道への警鐘 ーー1月22日(火)第5回 日中懇話会 1月22日(火)、東京都千代田区の日本教育会館で、「第5回 日中懇話会」が行われた。スピーカーの共同通信社論説委員・岡田充氏は、クリントン米国務長官の「尖閣諸島の管轄権は日本にある」という発言を、日本のメディアは大喜びで報じたと指摘。大手メディアは、中国に対する安倍政権の強硬姿勢を支持する論陣を張っているが、こうした日中摩擦は、「棚上げ」が唯一の有効手段であると主張した。 同じくスピーカーの東洋学園大学文学部教授・朱建榮氏も、「日本のマスコミは一方的な立場、論調でしか報じない」と、一律に国民感情を煽る報道姿勢について批判した。 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/54508 ■日隅一雄さんの思いを引き継ぐ ーー1月22日(火)「日隅一雄・情報流通促進基金」設立記者会見 1月22日(火)、東京都千代田区の司法記者クラブで、「日隅一雄・情報流通促進基金」設立記者会見が開かれた。「日隅さんはたくさんのことを思い残してあの世に行っているはず。私もあの世に行った時に『なぜこうしなかった』と言われたくないから、『日隅さん、少しはしたからね』と言わなければならない」。先月発足した「日隅一雄・情報流通促進基金」の代表理事、ジャーナリストの桂敬一氏はこう語った。 この基金は、表現の自由・情報公開制度・国民主権の推進を主な目的とし、こうした活動に関連する殊勲者の顕彰や、法的支援を必要とする個人・団体への財政支援を行う予定であるという。 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/54503 ■TPP慎重派議連が会合 メンバー203人に ーー1月23日(水)第43回TPP参加の即時撤回を求める会 1月23日(水)、自民党本部で「第43回TPP参加の即時撤回を求める会」会合が開かれた。この日は、ノンフィクション作家の関岡英之氏が「TPPに関する主要な論点の整理」と題して講演した。この日の会合には40人を超える自民党所属の議員が参加。事務局によると、メンバーは同日時点で昨年末から22人増え、203人となった。 会合後、同会の森山裕会長は記者団に対し「(聖域なき関税撤廃を前提にする限りTPP交渉参加には反対するという)衆院選での政権公約を参院選で変えるというのはあり得ない」と語った。 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/54690 ■原子力規制庁「法律に定められた施行日を守ることが大前提」 ーー1月23日(水)ここが問題!原発「新安全基準」院内集会・政府交渉 1月23日(水)、1月末にも骨子案が示される予定の原発の新安全基準をめぐり、原子力規制を監視する市民の会らによる政府交渉が行われた。市民側には、元ストレステスト意見聴取会の後藤政志氏、井野博満氏の他、元国会事故調調査委員の田中三彦氏が参加。専門家や技術者の質疑は2時間以上に及んだ。交渉相手の規制庁は、「技術的な問いには答えられない。重要な論点はパブリックコメントに寄せて欲しい」という回答に終始した。 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/54713 ■緊急被ばく医療検討チームが会合 医薬品・ヨウ素剤の扱いの困難さが課題に ーー1月24日(木)第7回原子力災害事前対策等に関する検討チーム及び第5回緊急被ばく医療に関する検討チーム第5回会合 2013年1月24日(木)、東京都港区の原子力規制庁で、「原子力災害事前対策等に関する検討チーム 第7回会合および緊急被ばく医療に関する検討チーム 第5回会合」が合同開催された。規制委員会の中村委員は「安定ヨウ素剤の件は、ここにいる皆さんは、方向的には一致している。防護のための一環として飲む。タイミング、指示だしが医薬品になっているので、なかなか踏み込んだ書き込みが出来ない」と述べた。 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/54853 ■国の縦割りシステムが復興を阻害する ーー1月24日(木)日本外国特派員協会主催 戸羽太陸前高田市長 記者会見 1月24日(木)、東京都千代田区の日本外国特派員協会で、「戸羽太陸前高田市長 記者会見」が開かれた。陸前高田市の戸田太市長は、「2年近く経っても被災地は被災地のまま。政権が変わり復興が迅速に行われる事を望み、陸前高田を素晴らしい街へ復興させる」と述べた。 復興が中々進まない理由として、戸羽市長は「国の考え方が一番の原因。スーパーを建てたくても、そこは農地なので建ててはいけないというのが国のルール。国のシステムが縦割り社会なのが問題」と語り、「復興庁ができて何か便利になったか? 何も便利になっていない。ひとつ手続きが増えただけ。窓口の一元化になっていない」と、菅直人元首相の政策を批判した。 自民党安倍内閣に政権が代わったことに期待を滲ませる一方、「希望もみえるが一方でこの政権がダメだった場合、日本はどうなるのか? とも思う」と、政治への不信感をあらわにした。 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/54861 ■小沢氏が代表就任 生活の党が党大会開く ーー1月25日(金)、生活の党定期大会および記者会見 1月25日(金)、千代田区永田町の憲政記念館で生活の党が党大会を開き、小沢一郎衆議院議員を新代表に選出した。同党は、消費税増税撤回、2022年までの原発全廃を柱とする基本政策案を発表。小沢新代表は、「もう一度、国民の生活が第一という基本の理念に則った政権を打ち立てたい」と決意表明した。 小沢新代表は今回の代表就任について、「権力の濫用により政治活動が制限された3年半だった。そのことで多くの同志に迷惑をかけたのではないかと危惧している。それでもご推挙いただいた以上、責任と決意を持って代表を果たさなければならないと思う」と、代表としての今後の意気込みを述べた。 また、自民党安倍内閣による、アルジェリア事件を契機とする自衛隊法改正論議について触れ、「美名のもとに軍隊を派遣するというのが、戦争の大きな理由となってきた。世界最強の米軍をいくら投入しようが安定を得る事はない」と批判した。 大会後に行われた代表の記者会見では、IWJの平山記者が質問。日本未来の党は原発を争点にして負けたという経緯があるが、次の参院選では何を争点化するのか?という質問に対し、小沢新代表は「原発が争点にならなかったのは、(政府やマスコミ報道により)国民に『安全だ』と流布されたのが原因。福島の原発事故はまだ収束していない。原発は大きな国民的な課題」と語り、次の選挙でも原発の問題を主張していく考えを示した。 【動画URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/55016 ======================= ◆IWJライブラリー◆ ======================= このコーナーでは、岩上安身が過去に行ったインタビューを振り返ります。 今週は、2011年12月30日に行われた孫崎享さんのインタビューをご紹介。 この時点で既に、日中間対立を演出するアメリカの世界戦略が語られています。 ■2011年12月30日 孫崎享氏インタビュー 岩上「米中の派遣ゲームがこれからも国際的な課題です。その中で、日本が核武装させられる可能性が出できます。というか、これまでになく、その可能性が浮上してきている。 岸信介の時代、あるいは正力松太郎の時代に埋め込まれていたタイムカプセルが今開いていて、『原発のためだけに必要だから、プルトニウムを導入したのではない。プルトニウムというのは、日本がいざというとき、核武装をするために必要なんだ』という本音が、もう一部ではむき出しになり始めている。  つまり、米国が日本に核を持たせた。少なくとも、プルトニウムを蓄積することをさせた。第二次大戦の戦勝国以外では、日本だけしか、こんなにもプルトニウムを蓄積していない。核兵器を製造できる量を優に超える原料が溜まっているわけですが、果たして日本は、核武装して自主的な主権のもと、核を使用しうるのか。そうではなく、孫崎先生が喝破して見抜かれたように、核は米国との間の『核の共有』しかないのか。後者の場合、米国の都合のいいように、手先として、中国に対する牽制役として使われ、もし核を使用するようなことがあれば、米国の国益のために、戦略のために使われるにもかかわらず、災厄と責任は全部日本に押しつけられる可能性がある」 孫崎「核の話は少し置いておいて、今、米国はアジアにもう一回出ようと言っています。クリントンも、オバマもそう言った。じゃあ、米国は自分の軍隊を増やしますか? 増やさないんですよ。財政負担があるから、米国が軍隊を増やすということはない。では、これから米国が東アジアにもっとコミットする、という意味は一体何でしょうか。それは、日本やフィリピンや、ベトナムや豪州など、それらの国々を、中国に対抗させる軸として使っていくためなのです。それが、オバマやクリントンが東アジアを重要だと言っていることの一側面なのです。対中包囲網の形成です。 そして、その流れに核がある。つまり、大きな流れとしては、日本を使って中国と対峙させる。これはもう決まっているのです。その中で、じゃあ果たして核まで日本に使わせるかどうかという話になってきます。ここで重要なことは、『米国が日本を使う』という形が、2005年頃から極めて露骨になってきたということです。」 岩上「日本には、2005年よりもずっと以前から、プルトニウムが蓄積されてきました。実は、米国の戦略は、もっとずっと前から用意されていたもので、それがそろそろ使い時だということで、『日本に核武装させたらどうだ』という話が、今露骨に出てきたのではないでしょうか。 そう考えていくと、そもそも1950年代、冷戦に入るタイミングで、日本の核アレルギーというものを鎮静化させるため、反核運動を鎮静化させるために、そして米国の核産業・原子力産業の利益のためにも、日本に原発を持ち込み、プルトニウムの蓄積を認めていった。 これによって、米国は、『いざとなったら日本をコントロールできる』という安心感を得る一方で、日本の保守勢力は『これをいざというときに使うことができる。使えるんだ』とずっと言ってきた。実は、アメリカはそれも見越していたのではないでしょうか。この1950年代のことと、2005年以降、現在も起こっていることとが繋がっている」 孫崎「繋がっています」 岩上「となると、米国の国際戦略、世界戦略のスケールはものすごいものですね」 孫崎「それは本当にすごいものです」 (次号に続く) *IWJサポート会員にご登録いただくと、このインタビューのフルバージョンをご視聴いただけます。 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/1463 ======================== ◆IWJカルチャー ======================== ■押井守監督が外国特派員協会で記者会見 ーー電子出版におけるマンガ表現の新たな可能性ー 1月23日(水)、日本外国特派員協会で、映画監督の押井守と漫画家の藤原カムイが記者会見を行った。日本を代表する二人のトップクリエイターの記者会見ということもあり、多くの報道陣が詰めかけた。といっても、新作映画のお披露目がされた訳ではない。この日のテーマは「進化するオンラインコンテンツ」。要するに、電子出版だ。この日の記者会見では、株式会社コミックアニメーションの建石俊之代表取締役社長同席のもと、同社から電子書籍として販売される、両者の新作マンガが発表された。 押井守の新作『ちまみれマイ・ラブ』は、献血マニアの高校生と吸血鬼「マイ」が繰り広げるドタバタコメディ。藤原カムイの新作『銀色のうさぎ』は、妖怪の世界に迷い込んだ超遠視能力を持つ少年の冒険譚だ。いずれも、1月20日から、itunes App Storeからダウンロードすることができる。 マンガを紙媒体ではなくデジタルコンテンツとして提供することの意味とは何か。押井氏は「アニメーションの仕事に近い」と感想を述べた。「マンガはコマ割りで見せる世界。では、それをデジタル化した場合、コマ割りの代わりにマンガをどう見せるか、というのが難しかった」。読者はディスプレイをタッチすることで物語を進める。言い換えれば、読者はタッチしなければ次の展開を知ることは出来ない。紙媒体のマンガが、コマ割りによって時間と空間を同一平面に落とし込むという表現方法を採用していた一方、電子媒体では、よりクロノジカルな側面が強調される。なるほど、これは確かにアニメーションに近い。また、外国人記者からは「RPGと近い印象を受けた」という声も上がった。 とすれば、この「電子マンガ」、今後どのようにして従来のアニメやゲームと差別化を図っていくのか。いやむしろ、このような問いが成立するということは、デジタルデバイス上では、マンガ、アニメ、ゲームといったジャンルの区別自体が意味を成さなくなったということを示しているように思われる。押井守監督には、ジャンルを横断するような、新たな表現を期待したい。(IWJ平山茂樹) ========================= ◆編集後記◆ ========================= IWJ週報、いよいよ創刊します。「1週間を振り返る内容のものが欲しい」という声にお応えするのがこの週報です。既存メディアが報じない、IWJならではのものをお届けします。IWJ週報、どうぞご期待ください!(ひ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 株式会社 インディペンデント・ウェブ・ジャーナル お問い合わせ: office@iwj.co.jp(IWJ) / iwakami.office@iwakamiyasumi.net(岩上安身事務所) 公式サイト: http://iwj.co.jp 会員サイト: https://www.siwj.jp/cd/user/Login/top 無料サポーターズクラブ: http://iwakamiyasumi.net/