【IWJブックレビュー】杉田聡編『福沢諭吉 朝鮮・中国・台湾論集~「国権拡張」「脱亜」の果て』(明石書店)

 「圧制はもまた愉快なるかな」――。これは、1882年3月28日付けの「時事新報」に掲載された福沢諭吉の論説の表題です。この論説で福沢は、以下のように述べています。

圧制を憎むは人の性なりと言うといえども、人の己れを圧制するを憎むのみ。己れ自ら圧制を行うは、人間最上の愉快と言いて可なり。在昔、我輩がその圧制をこうむりたるが故なり。幕吏にありては、あたかも人類の天性に従いて圧制を行うたるのみ。今日、我輩が外国人に対して不平なるは、なおいまだ彼の圧制を免れざればなり。我輩の志願は、この圧制を圧制して、ひとり圧制を世界中にもっぱらにせんとするの一時にあるのみ。

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 1882年といえば、1875年の江華島事件、1876年の日朝修好条規を経て、日本が朝鮮半島への足がかりを構築していく時代です。そんな時代に福沢は、イギリス人の中国人に対する高圧的な「圧制」に触れつつ、日本もまた「圧制」をする側に立ち、中国人・イギリス人をともに「圧制」したいと、語っているのです。

 このように福沢は、朝鮮、中国、台湾に対して、極めて拡張主義的な言説を数多く残しています。本書では、そうした福沢の言説を、本文に則して数多く収録し、杉田氏がそれぞれに解説を加えています。

 福沢諭吉全集は、21巻もあり、そのすべてを繙くのは骨が折れます。しかし本書は、その中から福沢の対外政策に関する言説を選り抜くことで、アジアに対する「拡張主義者」としての福沢像を提出しています。

 福沢の思想の本質を学びたいという方には、ぜひ、手にとっていただきたい一冊です。

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